鮎の腹が割れる理由、割れない理由
セレクトフーズでは冷凍鮎を販売しています。

冷凍鮎を売りに行くと必ず言われるフレーズがあります。
「冷凍鮎は腹が割れませんか?」
年間何トンも販売して、腹が割れるといったクレームを頂いた事はないので、「割れません」と答えていますが、根拠のない発言を繰り返すのは怖いものです。
ベテラン調理師に聞くと、鮎の腹が割れる理由、割れない理由、諸説出てきますが、どれも都市伝説みたいな推論ばかり。
板前さんは膨大な経験則がありますが、科学者ではありませんからね。

この前Мマートで販売した琵琶湖 天然小鮎 特大にコメントが付きました。

「腹割れなかったので新鮮な状態で素早く冷凍されたのがわかりました。」
嬉しいし、ほっとします。
腹が割れないなら自信をもって販売することは出来ますが、
「新鮮な状態で素早く冷凍された」からなのでしょうか。
岐阜県水産研究所の研究報告・業務報告 61号(2016年)に興味深い報告が掲載されていたので、読んでみました。
致死条件の違いがアユの鮮度関連指標に及ぼす影響
致死条件の違いがアユの鮮度関連指標に及ぼす影響(ダウンロードしたデータが開きます)
https://www.fish.rd.pref.gifu.lg.jp/kenkyu-houkoku/pdf-61-70/61-011.pdf(元のURLが開きます)
【鮎は鮮度劣化が速い】
一般的に魚介類は畜肉と比較して水分量や自己消化酵素が多く、さらに腐敗しやすい鰓や内臓がついたまま流通するため腐りやすい。特にアユでは、腹割れを起こすなど鮮度劣化が速いと言われている。
魚の鮮度評価には、筋肉中に存在するATP(アデノシン三リン酸)等の核酸物質に基づくK値で定量的に表現される。
ATP は死後急速に分解されて腐敗物質に変わる。
ATP (アデノシン三リン酸)→ADP(アデノシン二リン酸)→AMP(アデニル酸)→IMP(イノシン酸)→Ino(イノシン)→Hyp(ヒポキサンチン)
IMP(イノシン酸)は旨み成分だが、
Ino(イノシン)、Hyp(ヒポキサンチン)は腐敗物質です。
K値%=((Ino + Hyp)/(ATP + ADP + AMP + IMP +Ino + Hyp))×100
K値%=腐敗物質/全ての核酸物質
K値が小さいほど鮮度が良い。
具体的には、
20%以内 刺身など生食用
15~35% 鮮魚として市販されているもの
40%以下 煮魚用
60%以下 すり身など加工原料
60%以上 初期腐敗に相当する
貯蔵温度0℃、貯蔵時間48時間での魚ごとのK値の違い
サクラマス 15%
鮎 10%
真鯖 9%
ヒラメ 5%
真鯛 3%
鮎は比較的鮮度の低下が速いことが分かる。
【氷締めと野締めの違い】
(2014年7月14日 気温28.8℃で実験)
氷締め:100L コンテナに飼育水と氷を等量入れた氷水中に生きた魚を入れて約 5 分間放置して死亡させた。
野締め:生きた魚を約 15 分放置して酸欠により苦悶死させた。
野締めでは死に至る際に呼吸困難のため苦しみ暴れる。このため筋肉中の ATP がより速やかに分解される。
氷締め、5℃貯蔵(冷蔵庫相当)で 72 時間(3日)後、K値が21.8%。
野締め、5℃貯蔵(冷蔵庫相当)で 72 時間(3日)後、K値が28%。

氷締め、 0℃ 貯蔵(※氷敷ハッポースチロール)で 96 時間(4日)後、 K 値は 20%以下
更に、氷締めから氷蔵 5 日(約120時間)後においてもK値20%以下の報告例もある。
※ 氷締め後、氷を敷き詰めたプラスチック製のトレイの上にアユを並べ、発泡スチロール製の箱に収容して 5℃に設定した大型冷蔵庫(MITSUBISHI)にて貯蔵(試験中の箱内の温度は約0℃)した。
飲食店やホテルでは、魚の締め方は選べないが、貯蔵温度を0℃に下げる事で刺身でも食用可能な鮮度を保つことが分かった。
では、0℃より低い温度、冷凍にしてはいけないのでしょうか?
【冷凍の悪評と進歩】

冷凍庫メーカーKOGASUNのHPから引用します。(リンクしています)
(引用上、少し文章を加工しています。)
鮎の冷凍は非常にデリケートです。「解凍すると、西瓜のような独特の香りが消えて生臭くなる」「皮が乾燥して、ヒレや尾がボロボロになる」「焼いた時に内臓(ワタ)が溶け出す」といった課題があり、生に近い品質での長期保存は困難とされてきました。
悪評1:一般的な冷凍庫で風を当てて乾燥させてしまうと、西瓜(スイカ)やキュウリのような爽やかな香りが飛び、代わりに脂の酸化臭(冷凍臭)がついてしまいます。
悪評2:鮎の肌は非常に薄く、鮮度の良い鮎は独特の「ぬめり」を持っています。このぬめりは乾燥を防ぐ保護膜の役割も果たしますが、通常の急速冷凍機では乾いて白くカサカサ(冷凍焼け)になりがちです。
悪評3:冷凍鮎を塩焼きにするとお腹が破れて中身が出てしまうのは、凍結時にできた氷の結晶が内臓の細胞を突き破って破壊し、ドリップ化してしまうからです。
細胞を破壊しない為には氷の結晶を大きく育てない事が重要です。
テーマは急速冷凍です。
最近は、引用したKOGASUNのように鮎の品質を保ったまま急速冷凍出来る冷凍庫も増えて来ました。
【適正な解凍方法】
一方、解凍は飲食店やホテル側でする必要があります。
冷凍庫メーカーGALILEIのメーカーより解凍方法の解説を引用する。
◇自然解凍:すでに加熱調理をしていて、常温で置いておいても品質劣化のおそれが少ない食品に適している。
◇冷蔵庫解凍:食材や食品を冷蔵庫の中で解凍する方法。低温で解凍する方法なので、3つの中では一番時間がかかる解凍方法である。緩慢冷凍(食品を凍結する際、食品の中心温度がマイナス5℃~マイナス1℃の最大氷結晶温度帯に30分以上とどまって食品を冷凍すること)をしている食材・食品は、すでに細胞が一部破壊されてしまっている可能性があるため、ゆっくり冷蔵庫解凍をするのが適している。ドリップは出づらく、衛生的で味を守りやすい。品質管理が難しい食材・食品は、この解凍方法を選ぶのがベストなことも多い。
◇流水解凍:食材や食品を包装したままポリ袋に入れて、水を張った容器に浸して解凍する方法。他の解凍方法より短時間で解凍できる。うまみや栄養素が流出しやすいことが難点。しっかり急速凍結(食品を凍結する際、マイナス30℃以下の低温の冷気を強く吹きつけ、30分以内のできるだけ短時間にマイナス5℃~マイナス1℃の最大氷結晶温度帯を通過して凍結させること)をした肉や魚に適している。
ダイレイ 徳島産鮎の箱には、「冷蔵庫解凍」と「流水解凍」という相反する解凍方法が記載されている。
冷蔵庫内解凍が生ものの解凍には最適であるが、
しっかり急速冷凍しているので、お急ぎの場合は流水解凍をして頂いても問題ないですよ、
という事でしょうか。
【まとめ】
① 鮎は腐敗が進むと腹が割れやすくなる。
② 肉に比べて魚は腐敗しやすく、中でも鮎は鮮度劣化が速い。
③ 野締めより氷締めが良い。
④ 氷を敷いたハッポースチロールに埋めて0℃で保管するのが良い。
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⑤ 急速冷凍して細胞破壊を防ぐと腹割れが防げる。
⑥ 冷凍技術の進歩が著しい。冷蔵鮎を買ってきて店内で冷凍するならば、高性能急速冷凍機で冷凍された冷凍鮎を購入する方が良い。
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⑦ 時間にゆとりがあれば冷蔵庫解凍をお勧めする。
和歌山産 くまのあゆ、愛知産 ハーブあゆなど、
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